妖艶なナオミに魅惑される!谷崎潤一郎『痴人の愛』あらすじと感想

『痴人の愛』谷崎潤一郎

こんにちはshun(@bookstyle_book)です!

今回は久しぶりに近代文学を紹介したいと思います。

『痴人の愛』谷崎潤一郎

『痴人の愛』谷崎潤一郎 角川文庫

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『痴人の愛』は私小説というジャンルに属する小説です。

私小説とは、「著者が直接に経験した出来事を素材にして書かれた小説」のことを指します。

ナオミのモデルは谷崎潤一郎の妻の妹である、小林せい子という人物がモデルになっているそうです。

『痴人の愛』のあらすじ/要約

本書『痴人の愛』は「1人の男性が女性の美に服従し、隷属して行く過程を描いた小説」です。

主人公河合譲治はお金にも苦労せず、生活に不満のない平凡なサラリーマン生活を送っていました。

そんなある日、譲治は偶然立ち寄ったカフェでナオミ(奈緒美)と出会います。

ナオミは当時15歳で譲治は28歳でした。

譲治は年頃の女性を自分のもとで引き取り、そこで教育を身につけさせた後に結婚しようと考えていました。

譲治は、まだ15歳のナオミと一緒に生活することになります。

譲治はナオミを1人前の女性にするために英語や音楽を学べるように様々な労力を払います。

ナオミに対して教育を施している最中、譲治はナオミが他の男たちと関係を持っていることを知らされます。

知らない男への嫉妬から、譲治はナオミを家から追い出してしまいます。

しかし譲治のおかげで成熟したナオミの魅力的な肉体は、譲治の心を奪っていくのでした。

西洋人への憧れ

『痴人の愛』では、西洋人に対する日本人(河合譲治)のコンプレックスや憧れが散見されます。

ナオミに対して興味を持った理由も、名前をローマ字表記にするとNAOMIで西洋人のように見えることや、顔立ちが西洋人に似ていることを挙げています。

これらから、譲治の西洋人に対する好感が見られます。

また色黒で、歯並びが悪く、その上背が小さい譲治が、色白で優雅で体格の良い西洋の女性の手を触ってしまうことを躊躇しているシーンが『痴人の愛』の中にはあります。

そこでは、西洋人に対する憧れと日本人であることへのコンプレックスを読み取ることができます。

『痴人の愛』が出版されたのは1924年です。

文明開化が起こった明治期を過ぎても、西洋人に対する目新しさや優雅さへの憧れは当時残っていたのでしょう。

現代の私たちの中にも、「青い目」「生まれつきの金髪」などに憧れを抱く人は少なくないはずです。

ナオミの魅力

譲治はナオミを身体と精神の両方を成長させ、心身ともに立派な女性にさせようと多くの労力を払いました。

しかし、ナオミは譲治の理想通りにはなりません。

ナオミは結局身体の方だけ成長していき、娼婦のような存在になっていきます。

理想とは違った姿に成長したのにもかかわらず、譲治はナオミの肉体に魅了されていきます。

ナオミの魅力は一体なんなのでしょうか?

その魅力は「身体」だけでなく、「思わせぶりな態度」にあるのではないかと思います。

ナオミは譲治に対して様々な思わせぶりな態度を示します。

それは言葉の場合もあれば行動も場合もあります。

譲治がナオミを忘れかけてきた頃になって目の前に現れたり、日頃見せない肌を急に譲治に見せてきたり。

ナオミは幾度となく思わせぶりな態度を取っており、その態度が譲治を惹きつけてやまないのでしょう。

『痴人の愛』の終わりに/感想

最初カフェで働いていたナオミが、最後の方では、「別人格なのでは?」と思ってしまう程、異なる人物に変貌します。

「恋は盲目」という言葉があります。

しかし譲治の場合はもはやそれを通り越して中毒に近いような印象を抱きました。

麻薬やアルコールに近い中毒性がナオミにはあったのでしょう。。

現代でも、「妻は夫の浮気を見破ることが多いが夫は妻の浮気に気づかない」と言われることがあります。

著者である谷崎潤一郎は本書『痴人の愛』の中で、次のように述べています。

よく世間では「女が男を欺す」と云います。しかし私の経験によると、これは決して最初から「欺す」のではありません。最初は男が自ら進んで「欺される」のを喜ぶのです、惚れた女が出来てみると、彼女の云うことが嘘であろうと真実であろうと、男の耳にはすべて可愛い。(p79)

程度に差はあれ、譲治に限らず男にはそのような要素があるのかもしれません。

本書谷崎潤一郎の『痴人の愛』を読んで、「谷崎潤一郎という人は変態なのではないか?」と思う人もいるかと思います。

「耽美派」の小説は好き嫌いがかなり分かれる小説なのではないかと読んで思いました。

コラム:「耽美派って何?」

谷崎潤一郎は「耽美派」の小説家としてよく紹介されます。

しかし、耽美派って何?という方もいるかと思います。日本には「白樺派」「写実主義」「ロマン主義」など様々なジャンルがあるので理解しにくいです。

そこで、ここでは耽美派とは何かについて説明したいと思います。

耽美派とは「道徳功利性や常識を超えて、美を最上かつ唯一のものとして追求している文学」のことです。

善悪を気にすることなく、作品が美しくなることを目指し、主観的に美を描きます。

耽美派の作品はどれも退廃的で、エロティックで、非道徳的。そういったものの中に美を見出すのが耽美派です。

<記事で触れた書籍一覧>

『痴人の愛』谷崎潤一郎

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