永井荷風の最高傑作?『濹東綺譚』のあらすじをわかりやすく紹介


こんにちはshun(@bookstyle_book)です!

今回は久しぶりに近代小説を読了したので、紹介していきます。

『濹東綺譚』永井荷風 岩波文庫

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『濹東綺譚』は永井荷風の作品の中でも最も認知度が高い作品で、最高傑作とも評されています。

そんな永井荷風『濹東綺譚』のあらすじや感想について今回は紹介していきます。

『濹東綺譚』あらすじ/要約

主人公の大江匡は小説家です。

自作の小説「失踪」を完成させるために、当時私娼窟であった玉の井(現在の墨田区東向島)へと取材に向かいます。

ある日の夕方、大雨が降ります。

大江が傘を差すと、1人の女性がその傘の中へ入ってきました。

その女性の名前はお雪。お雪は私娼として生活していました。

偶然の出会いをきっかけとして、大江は度々お雪の元に通い詰めるようになるようになります。

娼婦という身であることをお互いに理解しつつも、2人は次第に好感を持つようになっていきます。

主人公の大江匡のモデルは永井荷風自身であると言われており、私小説に近いと言えます。

身近な女性と関係を持つのではなく、あえて娼婦と関係を持ちたがったと言われる永井荷風。

そんな彼自身をモデルにこの作品『濹東綺譚』は作られています。

小説「失踪」

先ほども少し紹介しましたが、主人公の大江は小説家です。そして自作の小説のタイトルが「失踪」です。

「失踪」の中での主人公の名は種田純平

種田は英語の教員として生活を営んでいました。種田は初婚の妻が先立ったのちに、光子という子持ちの女性と結婚します。

その後もう1人子供を持ちますが、種田は家族での生活に嫌悪感を覚えます。

英語教員を辞職したのと同時に、種田は家に帰らず失踪してしまいます。

種田はカフェで以前関わりがあったすみ子と出会い、関係を深めていきます。

この小説「失踪」の中で、個人的に印象が残ったセリフがあったので、紹介していきます。

種田は今夜すみ子の泊まっているアパートに行き、それからゆっくり行末の目的を定めるつもりなので、行った先で、女がどうなるものやら、そんなことは更に考えもせず、また考える余裕もない。唯今日まで二十年の間家族のために一生を犠牲にしてしまった事が、いかにもにがにがしく、腹が立ってならないのであった。(位置382/1575)

20年間も家族のために働いて、後悔しか残らない時の心情は推し量ることすら自分にはできません。

自分の数年間、或いは数十年間をその人と共にできるかどうかを真剣に考えることの重要さが本書『濹東綺譚』から伺えます。

大江とお雪の関係性

大江とお雪の関係性はかなり淡白です。

2人はお互いの表面的なことしか知りません。

『濹東綺譚』本文にはお雪が娼婦であることをしっかり感じさせるような描写もありません。

大江とお雪はお互いに好感は持っているものの、客と娼婦という立場上なのか、お互いに一歩引いたやり取りをしています。

よく「恋は盲目」と言いますが、大江とお雪の2人は盲目どころか、お互いのことを冷静に観察しています。

心理的な駆け引きをしているようにも見えます。

何か特別に取り立てるような出来事は本書『濹東綺譚』で起きません。

しかしお互いに一歩引いたやり取りが、かえって2人の関係性を際立たせているのかもしれません。

『濹東綺譚』感想/まとめ

今回読んだ『濹東綺譚』では、玉の井の背景についても想像しながら読むことができました。

風俗や季節などの描写にも注意して読むことによって、物語をより理解しやすくなっています。

感想についてですが、「私娼窟ってこんなにさっぱりしているの?」という疑問を持ちました。

玉の井は、娼婦窟であることを忘れてしまいそうなくらい描写がさっぱりしています。

私娼窟というと、もっと男女関係が入り混じった空間だと思っていたので、これは少し意外でした。

今回私は青空文庫の『濹東綺譚』を読みました。

しかし岩波文庫をはじめ、他の出版社から販売されている『濹東綺譚』には挿絵が挿入されていることもあるそうです。

挿絵がある方が、永井荷風の描写の上手さをより具体的に理解できるかと思います。

永井荷風の文学をより楽しみたいという方は青空文庫ではなく、他の出版社の『濹東綺譚』を読むほうが良いかもしれません。

逆に自分のように、永井荷風の作品自体も初めてで、とりあえず永井荷風の作品を読んでみたいという方は青空文庫でも十分ではないかと思います。

Kindleのような媒体さえあれば無料で読めますしね。

自分にあったものを読んでみてはいかがでしょうか。

それではまた〜。

<記事で触れた書籍一覧>

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