人間の精神崩壊の過程を描く!『或る女』有島武郎の感想と要約を紹介!

或る女

こんにちはshunです!

今回はこちらの本を読了したので、紹介したいと思います。

或る女

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最近、日本の近代小説への熱が再加熱しています。私はkindleを持っているので、青空文庫を利用して無料で読むことができるます。非常にありがたいです。

余談ですが、青空文庫版では、前編と後編に分かれています。新潮文庫は1冊です。

それでは早速、有島武郎の『或る女』のあらすじや感想について紹介していきます。

『或る女』あらすじ/要約

まず、一言で、『或る女』のあらすじを記載すると、「1人の女性の精神が崩壊していく物語」です。

主人公の葉子は男性をたぶらかしてばかりの女性です。

葉子はまず最初に木部という男性と恋愛に落ち、そして子供をもうけます。しかし、2人の関係はすぐに上手くいかなくなります。

その後葉子はアメリカに滞在している木村と結婚するためにアメリカに渡ろうとします。

しかし、その渡航中、船にいた事務長の倉地に惹かれていき、2人は相思相愛になっていきます。そしてアメリカには行かずに日本に戻ってしまいます。

葉子は倉地と共にすることを決めていたものの、一方で木村に対しても思わせぶりな態度をとり、お金を巻き上げます。

そんな葉子は次第に、「倉地が自分以外の女に惹かれていくのはではないか」と思うようになっていきます。

以上が大まかなあらすじになっています。

驕慢な嬢王

『或る女』のような小説を読むと、美人には美人で辛いことがあるのかもしれないと考えさせられます。

葉子は男性からの注目を絶えず受けるような美女です。そんな美女であるために、言い寄ってくる男性も多く、葉子は簡単に男性を取っ替え引っ替えできます。

自分の思い通りに男性を弄ぶことができる。まさに驕慢な女王です。

「隣の芝生は青い」という言葉もある通り、私たち人間は自分が所有していないものばかりに目が行きがちなものです。

しかし、自分が男性を取っ替え引っ替えできる分、男も葉子をいつでも手放すことができることに葉子は気づいていません。

そこには一応の男女関係が築かれているものの、いつ何時でも崩壊する可能性のある脆い関係なのです。

これは葉子が美人である故の悩みなのかもしれません。

人間の落ち目

倉地と葉子2人の会話の中で、倉地が葉子に行ったこのセリフが私にとって印象深いものだったのでここでは取り上げたいと思います。

「そうだ俺もそう思うことがあるて・・・・・・。落ち目になったら最後、人間は浮き上がるがめんどうになる。船でも浸水し始めたら埒はあかんからな。・・・・・・・したが、俺はまだもう一反り反ってみてくれる。死んだ気になって、やれん事は一つもないからな」(位置3452/5134)

なるほど、確かにその通りでしょう。『苦役列車』の主人公北町貫多もそうでしたが、人間は堕落しがちな生き物です。

私たちはいつもより楽な生活を求め、より簡単に金が手に入るようことをいつも願っています。

元のような苦しい生活にわざわざ戻ろうとするような人はほとんどいないはずです。

そして自分たちが危うい状況に陥っていることに気づかずに破滅していくのです。

『或る女』感想/まとめ

物語中盤あたりからかなり引き込まれていきました。

主人公の葉子がいわゆる「悪女」であることは間違いありません。

しかし、以前読んだ『痴人の愛』のナオミのような徹底的な悪女とは少し異なっています。ナオミは徹底的な悪女である一方で、葉子にはそこまで徹底した悪女ではありません。

私には葉子が自分が男を振り回していることに対しての罪悪感を抱いているように思えるのです。

そしてその罪悪感が知らず知らずのうちに自分自身を蝕んでいってしまい、そして自分自身をも滅ぼす結果となってしまったのでは無いのでしょうか。

全くジャンルが違うのですが、ドストエフスキーの『罪と罰』に登場する主人公の「ラスコーリニコフ」と葉子が似ているように感じました。

『罪と罰』のラスコーリニコフも自分自身が行ってしまった罪に対しての罪悪感から、自分自身を崩壊させています。その点で葉子と似ているように思えました。

『或る女』は人間の心理が崩壊していく様子を見事に表した作品です。

1人の男性がこんなに女性の心理を的確に描くことができることができるものなのかと感慨されられました。自分自身をモデルにしているわけでもないのに、これほど葉子という人物の精神の崩壊をうまく描き出しているというのはさすがでしかありません。

今まで読んだ近代小説の中でも上位に入る面白さでした。少し分量があるので、読むのに時間がかかりますが、時間のある方はぜひ読んでみてはいかがでしょうか。

それではまた〜。

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