妖女の中から垣間見える怒りとは?菊池寛の『真珠夫人』あらすじ紹介

真珠夫人

こんにちはshunです!

今回はこちらの本を読了したので、紹介したいと思います。

真珠夫人

『真珠夫人』菊池寛 文春文庫

⇒Amazonで見る

それでは早速、真珠夫人』のあらすじや要約を紹介していきます。

『真珠夫人』あらすじ/要約

『真珠夫人』には多くの人物が登場するので、主要な人物を先に記載しておきます。

・壮田瑠璃子・・・物語の主人公。杉野直也という人物と交際していたが、金銭面の都合から壮田勝平と結婚する。

・壮田勝平・・・成金。金にモノを言わせて瑠璃子と結婚する。

・青木淳・・・自殺願望を持った大学生。不慮の事故によって亡くなってしまう。

・渥美信一郎・・・青木淳と同じ自動車に乗車していた男性。青木淳から形見を渡されることになる。

あらすじは以下の通りです。

渥美信一郎と青木淳は自動車に乗車中に不慮の事故に遭います。信一郎は無事でしたが、その事故によって、青木淳は亡くなってしまいます。

死の直前、青木淳は信一郎に対して、時計とノートを託します。そして瑠璃子という人物の名前を口にし、時計を瑠璃子に返して欲しいと言います。青木淳の最後の言葉を聞いた信一郎は瑠璃子という女性を探すことになります。

信一郎は瑠璃子を見つけ出します。しかし、瑠璃子はその形見の時計に対し、少し動揺しただけで、それ以上の反応を示しません。そして瑠璃子は信一郎を音楽会に誘います。

交流を深めていく内に、信一郎は瑠璃子が複数の男を弄んでいることに気付きます。

どうして、瑠璃子は男を弄ぶような行為をしているのか。それは瑠璃子の壮絶な過去に基づくものでした。

金で買われた少女

壮田勝平はいわゆる成金でした。彼は自分自身が成功し、上流階級の仲間入りをしたことに自信を持っていました。

しかし、そんな勝平の矜持はある日、2人の少年と少女に簡単に壊されてしまいます。

子爵の息子であった、杉野直也と男爵の娘であった瑠璃子。彼らは勝平とは違い、昔ながら代々続く金持ちでした。彼らは成金である勝平のことを蔑み、見下します。

その2人の会話を偶然聞いていた勝平はショックを受けます。自分が上流階級の中でも認められてきていると思い始めた矢先の出来事でした。

また、瑠璃子の美しさを目の前にし、今まで付き合ってきた女性とは決定的な何かが違っているようの勝平には思えました。

侮辱された復讐をするため、そして瑠璃子という気高い美貌を持つ女性と関係を持つため、勝平は瑠璃子の父親にある策を仕掛けることにしました。

女性の怒り

数多くの男性を弄んできた瑠璃子。瑠璃子が原因で自殺した男性もいます。

そんな瑠璃子に対して、渥美信一郎は男を弄ぶことはやめて欲しいと瑠璃子に伝えます。

しかし、信一郎の必死の説得も虚しく、返って来た返信は「ノー」でした。そして信一郎に対して、瑠璃子とは以下のようなことを述べます。

女性が男性を弄ぶと貴方方男性は、直ぐ妖婦だとか毒婦だとか、あらん限りの悪名を浴びせかける。貴君などは、目の色を変へてまで、叱責なさろうとする。が、御覧なさい!世間の男性がどんなに女性を弄んでゐるかを。女性が男性を弄ぶに致しましたところで、それは男性の浮動し易い心を、弄ぶのに過ぎないじゃありませんか。男性が女性を弄ぶ場合は、心も肉体も、名誉も節操も、蹂躪し尽くすぢゃありませんか。目にこそ見えませんが、この世間には男性に弄ばれた女性の生きた惨たらしい死骸がいくつ転がってゐるかも分かりません。(位置5035/7186)

女性よりも比較的金がある男性は、自分の妻以外の女性に目を向けることもよくあります。

「男性も女性を弄んでいるなら、女性だって男性を弄んでもいいのではないか。」

ハンムラビ法典の「目には目を、歯には歯を」ではありませんが、瑠璃子の行動は、今まで瑠璃子が男性に弄ばれてきたことへの復讐なのではないでしょうか。

『真珠夫人』感想/まとめ

男性優位の社会の中で、自分自身をアンチテーゼとして定義し、生き続けた瑠璃子。

しかし、当然のことですが、全ての男性が金を使って女性の心を弄んでいるわけではありません。

瑠璃子が抱いた男性や社会に対しての怒りは理解できますし、最もだとも思いますが、関係のない男性にも復讐のような行動をすることには理解ができませんでした。それはもはや当たり散らしに近いような行動です。

弄ばれた男性も瑠璃子同様に復讐しようを考えるかもしれません。それではいつになっても復讐が連鎖的に続いてしまいます。

もしかしたら、瑠璃子自身も、自分と関係のない男性を弄ぶことがよくない行動であることは理解できていたかもしれません。合理的な理解は自分でできていても、自分の感情を制御できなかったのかもしれません。

まさに、悲劇的な物語です。

「金」「男女関係」「差別」など多くのテーマが一冊の本に凝縮されています。一冊の本にこれほど多くのテーマを感じたのは、ドストエフスキーの『カラマーゾフの兄弟』を読んで以来です。

これだけ面白い小説なのに、あまり知名度がないのはなぜなのでしょうか。やはり代表作『父帰る』の方が読んだことある方は多いのかもしれません。

菊池寛の他の小説もこれから読みたいと思います。私は青空文庫の『真珠夫人』をkindleを使って読みました。無料で読めるので、おすすめですよ。

それではまた〜。

<記事で触れた書籍一覧>

真珠夫人

『真珠夫人』菊池寛 文春文庫

⇒Amazonで見る

真珠夫人

『真珠夫人』菊池寛 青空文庫

⇒Amazonで見る

<関連記事>

「男女交際の価値観が現代と違う?田山花袋の『蒲団』の感想を紹介!」

「夏目漱石「こころ」を読んで。近代文学を読むのに必要な準備とは」

「妖艶なナオミに魅惑される!『痴人の愛』谷崎潤一郎のあらすじ紹介!」

「永井荷風の最高傑作?『濹東綺譚』のあらすじをわかりやすく紹介」

「人間の精神崩壊の過程を描く!『或る女』有島武郎の感想と要約を紹介!」