プロレタリアートの過酷さとは?葉山茂樹『海に生くる人々』岩波文庫

海に生くる人々

こんにちはshun(@bookstyle_book)です!

今回は久しぶりに近代文学を読了したので、紹介していきます。

海に生くる人々

『海に生くる人々』葉山茂樹 岩波文庫

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本書『海に生くる人々』はプロレタリア文学の先駆けとなった作品だと言われています。

かの有名な小林多喜二の『蟹工船』にも影響を及ぼしたと言われているのが本書『海に生くる人々』です。

そんな葉山嘉樹の『海に生くる人々』についてここではあらすじや感想を紹介します。

『海に生くる人々』あらすじ/要約

『海に生くる人々』は、プロレタリアートの過酷な労働現場を書き出した小説になっています。

舞台は第一次世界大戦の真っ只中の、北海道室蘭です。

室蘭では石炭がよく採取でき、 石炭は船を通じて横浜へと運ばれていました。

石炭を室蘭から横浜へと運んでいる船の名が「万寿丸」。

『海に生くる人々』では、万寿丸に同乗するプロレタリアートたちの過酷な労働現場が記されています。

小林多喜二の『蟹工船』はフィクションですが、葉山嘉樹の『海に生くる人々』は著者である葉山嘉樹の体験に基き、書かれています。

葉山嘉樹自身も室蘭から出る石炭船の一員として働いていたことから、その時の経験を元に本小説を書き上げたことは想像するに容易いでしょう。

過酷な労働

本書『海に生くる人々』で書かれている労働者の労働の実態は、過酷極まるものでした。

万寿丸に同乗している労働者たちは、1日に14時間以上も労働することを強いられています。

その上、休日も非常に少ないのです。繁忙期には週に一度の休暇すらとることができないという状況に陥っています。

さらに、労働者たちの労働を過酷なものにしているのは労働時間だけではありません。

本書『海に生くる人々』での舞台は真冬の北海道室蘭です。

当然のように氷点下を下回り、作業服も凍ってしまうような労働環境の中で、労働者たちは船の上で作業することを余儀なくされます。

想像を絶するような過酷な環境下での労働。

労働者たちは次第に理不尽な要求を強いてくる船長に対して不満を持つようになっていきます。

船長vs.乗組員

本書『海に生くる人々』の構造としては、船長vs.乗組員という構造になっています。

船長は乗組員たちのことをもはや人とは思っていません。

船長にとって乗組員は自分の私服を肥やすための道具にしか過ぎない存在なのです。

そのような考え方をしているため、乗組員にわざわざ休暇を与えることもしたがりません。

船長にしてみれば、乗組員を安い給料で常に働かせている方が自分の私服は肥えていくからです。

個人的に印象に残ったのがこのセリフです。

君の生命は、君にとって永久に大切であるが、ブルジョアジーにとっては、君の生命が搾取されうる間だけ、役に立ちうるということだけなんだ!(青空文庫 位置2397/3852)

お金がないというそれだけのことで人がこれほどまでに辱められるものなのかと『海に生くる人々』を読む者は戦慄させられます。

『海に生くる人々』感想/まとめ

実際に労働者側として働いた経験を持つ筆者が書いているため、リアリティが非常に高いです。

船長とのやり取りも生々しく、どこまでがリアルでどこまでがフィクションなのかわからなくなります。

労働者たちの悲痛な叫び、そして労働者たちを使い捨ての道具としてしかみていない船長。

今でもブラック企業のように労働者を一方的に搾取するようなことはあるかもしれません。

しかし『海に生くる人々』に書かれているほどの過酷な労働現場はそうはないでしょう。

まるで奴隷であるかのように働かされる人々の描写を見て、現代にも通じる問題意識を感じずにはいられません。

痛々しく、暗い。終始重たい雰囲気の小説です。

気になった方はぜひ読んでみてはいかがでしょうか。

それではまた〜。

<記事で触れた書籍一覧>

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