第134回芥川賞受賞!絲山秋子『沖で待つ』のあらすじ/レビュー

『沖で待つ』

こんにちはshunです!

今回、こちらの本を読了したので、紹介します。

『沖で待つ』

『沖で待つ』

絲山秋子 『沖で待つ』 文春文庫 2009年

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『沖で待つ』は第134回芥川賞に選ばれた作品です。私が今回読んだのは2009年のものですが、2018年の1月30日には第3刷が出版されたようです。

「芥川賞ってそもそも何?」という方のために、下のコラムで芥川賞についてまとめておきますので、よければそちらも読んでください。

『沖で待つ』では、『沖で待つ』の他に

・『勤労感謝の日』

・『みなみのしまのぶんたろう』

という2作品も併録しています。

それでは早速、まだ『沖で待つ』を読んでいない人向けにこの本のあらすじについて簡単に紹介します。

『沖で待つ』あらすじ/要約

『沖で待つ』の登場人物で、主人公の及川は住宅設備機器メーカーに新卒で就職します。そして同じ新卒入社の牧原こと「太っちゃん(ふとっちゃん)」と一緒に福岡に配属されます。

及川と「太っちゃん」の2人は仕事の仕方や性格などは全く異なっているにも関わらず、非常に気が合いました。2人は次第に信頼関係を深めていきます。

及川は太っちゃんに対して、恋心を抱くことはなかったものの、「仕事のためだったら、太っちゃんのためなら何だってできる」と思えるぐらい、2人の信頼関係は強固でした。

しばらく時が経過し、2人は異動によって別々の地域へ配属されることになります。

別々の地域に配属された後に、2人は東京で再開し、2人だけの約束を結びます。2人の内どちらかが死んでしまった時に、死んでしまった人の秘密を生きているもう1人の方が隠すという約束です。

ある時、不慮の事故で「太っちゃん」が死んでしまいます。その後及川は「太っちゃん」と交わした約束を果たすために太ちゃんの家へと出向き、太っちゃんの秘密を守るために犯罪すれすれの行為をするというのが『沖で待つ』のあらすじです。

『沖で待つ』では、男女の垣根を超えた暖かい人間関係や、太っちゃんのドジな一面などを読み取ることができます。

同時に、男女の雇用が均等ではなかった当時の社会的な面も描き出していて、男女間の「格差」についても考えさせられます。

男女間の雇用機会

この『沖で待つ』では、「労働と人間関係」が主要なテーマとなっています。

『沖で待つ』は作者絲山秋子さんの実体験を元に書かれているそうです。

絲山秋子の新卒入社前には男女雇用機会均等法(1986年)に制定されています。

バブル崩壊直前に入社したので、好景気で、企業の採用状況もよかったそうです。しかしそれでも女性の新卒総合職採用は男性の20分の1ほどでした。絲山秋子の女性の同期は10人しかいなかったと解説には記載されています。

まず、解説を読んで気づいたのが、「雇用機会均等法が制定されてから4~5年経過しているのに、相変わらず男女の雇用機会の均等化は図られていなかった」という事実です。

厚生労働省の調査によると、男女雇用機会均等法以来、女性の雇用者数は年々増加傾向にあります。女性の雇用者数は増える一方で、総合職としての需要は少なかったということなのでしょうか。

『沖で待つ』感想/まとめ

『沖で待つ』では及川と「太っちゃん」の暖かい人間関係が描かれており、人間同士の絆について考えさせられました。

「太っちゃん」は自分の秘密を隠し通して欲しいがために、同期で最も信頼のおける及川に頼みごとをしました。及川も「太っちゃん」の秘密を守るために犯罪ギリギリの行為しています。

ここではやはり「同期」という言葉がキーワードだったのではないでしょうか。

もし及川と「太っちゃん」が同期でなかったら2人の間でこのような秘密の約束はなかったのではないかと思います。

社会人1年目に自分が全く知らない地域で働くということはかなり精神的に辛いことだと思います。右も左もわからないという中で、最初に同じ苦しさを共有してきた同期の存在は、かけがいのないものだったでしょう。

その意味で、及川と「太っちゃん」は他の同期には感じることのできない絆をお互いの中に見出していたはずです。

2人がお互いを異性として認識するといった描写は『沖で待つ』にはありません。恋愛の対象には絶対になり得なかった2人の間だからこそ、深い絆で結ばれることができたのでしょう。

それではまた〜。

~コラム:芥川賞って何?~

芥川賞は正式には芥川龍之介賞で、芥川の友人である菊池寛が1935年に創設した文学賞のことです。芥川賞の特徴は以下の通りです。

<芥川賞の特徴>

・純文学の中から選出。純文学とは娯楽性や商業性よりも芸術性や形式に重きを置いている小説のこと。

・主に短編/中編作品が選考の対象

・新人作家や無名作家が受賞するケースが多い

・7月と1月の年2回選考会がある

・正賞として懐中時計が、副賞として100万円がもらえる

こんな感じですかね。報酬が少ないように思えるのは私だけでしょうか、、。しかし、芥川賞受賞という箔がつけば売り上げも伸びるはずですし、総合的に見れば十分な額なのかもしれません。

それではまた〜

<記事で触れた書籍一覧>

『沖で待つ』

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絲山秋子 『沖で待つ』 文春文庫 2009年

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