天安門事件での学生の翻弄を描く!『時が滲む朝』|楊 逸のあらすじ

『時が滲む朝』

こんにちはshunです!

今回はこちらの本を紹介したいと思います。

『時が滲む朝』

『時が滲む朝』

『時が滲む朝』 楊 逸  文春文庫

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『時が滲む朝』は2008年の第139回芥川賞を受賞しています。

それではあらすじや感想などを紹介していきます。

『時が滲む朝』のあらすじ/要約

『時が滲む朝』は、中国の天安門事件に振り回される学生を中心とした物語です。

中国の難関大学である秦漢大学に猛勉強の末、合格した梁浩遠(りょう・こうえん)と謝志強(しゃ・しきょう)の2人。その後大学生活を送る中で、2人は中国の民主化運動に加わることになります。

そんな中、民主化運動に加わった2人の前で、天安門事件が起こります。天安門事件をきっかけに2人の人生は大きく転換していきます。

時代の波に翻弄される中国の学生の姿を描いた1冊になっています。

天安門事件

梁浩遠と謝志強は秦漢大学に入学後、秦漢大学の教授である甘凌洲 (かん・りょうしゅう)や白英露(はく・えいろ)などとの交流の中から、民主主義の国家であるアメリカに理想を抱き、中国の民主化運動に加わることになります。

そんな中、天安門事件が起こります。

天安門事件は1989年6月4日に起こりました。元総書記で中国の民主化を目指していた胡耀邦の葬儀に10万人を超える人々が民主化を求め集まりました。

しかし、当時の中国政府はそのデモを武力で制圧します。天安門事件における死者は正確なデータが取れていないそうですが、数千人もの人が死亡したというような説もあるそうです。

革命に参加するか(赤)、それとも反革命に回るのか(黒)の両極端しかない時代の波に梁浩遠たちは飲み込まれていきます。

異文化の中での生活

異文化で生活するということは誰でも不安になるのではないでしょうか?自分が普段話している言語が周りと違うだけで、まるで関わることすら阻害されているような感覚に私も陥ったことがあります。地理的に比較的近い、中国と日本でもそれは変わらないでしょう。

日本にやってきた梁浩遠も異文化の中での生活に苦労している場面がいくつもあります。

日本語をまだ自由に話せない中国人の自分が家族を養えるほどのお金をどうして稼げるのか、言われなくても自覚を持っている。(p121)

この梁浩遠の発言は異文化の中での生活の難しさを表しています。小さい頃であれば、名前でからかわれたり、いじめを受けることもあるかもしれませんし、生まれが中国だからという理由だけで日本人にはより時給が低かったりすることもあります。

楊 逸さんの著書『時が滲む朝』は、ただの小説ではありません。『時が滲む朝』は中国出身の人だからこそ書ける視点で描かれています。

『時が滲む朝』の終わりに/感想

梁浩遠たちと労働者たちの喧嘩の場面も個人的には印象に残りました。梁浩遠たちに対し、労働者たちは次のようなことを言っています。

「若くて良いな、親から仕送りをしてもらって、何の心配もしないで、民主だの自由だの選挙だのと格好良いことを言ってさ。女房も子どもも養わなきゃならない俺らは愛国心だけじゃ生きていけないんだよ」(p87)

おそらくですが、労働者の人々も民主化を志望したことがあるのでしょう。これらの労働者の人々の台詞は自分たちが立ち上がっても国を変えることができなかったという背景を持った人だからこそ言える台詞なのではないかと思いました。また、この台詞の中に当時の中国の人々の苦悩が出ていると感じます。

本書『時が滲む朝』を読んで、戦後の中国事情について深く理解したくなりました。それだけでも、本書を読んで良かったのではないのかと思います。文学的にものすごい魅力があったかと言われれば、そこまでではないかなと思います。日本人こそ、歴史を風化させないために、そして他人事と思わないために読むべき1冊なのではないかと個人的には思いました。

それではまた〜。

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『時が滲む朝』 楊 逸  文春文庫

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