これこそまさに純文学!奥泉光『石の来歴』(文春文庫)あらすじ/感想

『石の来歴』

こんにちはshunです!

今回はこちらの本を読了したので、紹介します。

『石の来歴』

『石の来歴』

『石の来歴』奥泉光 文春文庫

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『石の来歴』は第110回に芥川賞を受賞しています。この『石の来歴』には

・『石の来歴』

・『三つ目の鯰』

の2つの小説が収録されています。どちらも読みましたが、今回は『石の来歴』を中心にあらすじや感想などについて紹介していきます。

それではあらすじと要約の方に移っていきたいと思います。

『石の来歴』あらすじ/要約

主人公である真名瀬剛は、レイテ沖での戦闘の中で、戦友の上等兵から石の魅力について語られます。太平洋戦争を真名瀬はなんとか生き抜き、戦後は石の採集に夢中になります。

その後、妻と結婚をするようになり、2人の子どもが生まれます。平凡な家庭が営まれ、長男である裕晶は父親の影響で石の採集をし始めます。

裕晶が小学生だったある日、裕晶が石の採集に出かけたきり夜になっても帰ってきません。不吉な予感は的中し、長男は何者かに殺されてしまっていました。

長男の死亡をきっかけに家庭は崩壊していきます。果たして、長男を殺したのは誰なのか?そして長男の死を受け、妻と次男、そして真名瀬がとった行動とは?

『石の来歴』は夢と現実、そして過去と今が交錯し、区別がつかなくなるような、まさに純文学と呼べる1冊になっています。

石の魅力

私たちは普通に生活している中で石に対して注意を向けることはほとんどありません。石は私たちにとっては言わば、「どうでもいい存在」です。道端に落ちている石が急になくなっても困る人はほとんどいないはずです。

しかし、真名瀬の戦友であった上等兵は真名瀬に対して石の魅力について熱心に語っています。上等兵はレイテ島の洞窟の中で、「石はマグマや生物の死骸などからできているものであり、常に形を変えている」と真名瀬に語っています。

つまり、石は絶えず形を変えながらも現在まで存在し続けているということになります。

確かに、そう言われると、石が持つ歴史の長さを理解することができます。あまりの年月が立っているので、実感することは難しいですが、普段何気なく転がっている石には想像を絶するほどの歴史が含まれているのです。

少しゾッとしますが、私たちが普段見ている石はもしかしたら誰かの死体からできているのかもしれないのです。

長男裕晶の謎の死

戦後、真名瀬は実家の古本屋継ぐことになりました。その後、結婚もするようになりました。妻は夫の石の収集に対して軽い愚痴は言いつつも特に目立った問題はなく生活していました。

そんな2人の間に長男の裕晶が生まれます。裕晶は幼少期の頃から父親の影響を強く受け、石の収集に対して興味を持つようになります。

最初真名瀬は、裕晶の石への関心はすぐなくなるものだと思っていましたが、裕晶が石への関心を飽きずに持ち続けているのを見て、科学者としての道に将来進むことができるのではないかと思うようになります。妻も学問を学ぼうとしている息子に対して期待を抱くようになります。

そんなある日、石切場で裕晶が死亡しているのが発見されます。死因は刺傷による出血多量で、刃物による刺傷は数十カ所にも及ぶ残虐な犯行でした。しかし、警察の捜索も虚しく、犯人を見つけ出すことはできませんでした。

この長男の裕晶の死をきっかけに家庭は崩壊していきます。妻は裕晶石に興味を持ったせいで殺されたんだと、真名瀬を責めるようになります。

『石の来歴』感想/まとめ

先ほども言いましたが、まさに純文学というような小説でした。どこまでが夢で、どこまでが現実なのかの区別をつけるのが難しく、最初はストーリーがぐちゃぐちゃになります。

またストーリーに関しても、最初はただ、1人の石が好きな男の話なのかと思いましたが、ラストの方で度肝を抜かれました。小説を読んでここまで戦慄させられたのは久しぶりです。

ただ、「著者奥泉光の伝えたいことは一体なんだったのか」という点が少し気になりました。読んでいて非常に面白く、奥泉光の他の著書も読んでみたいと思いましたが、作品を通して何を伝えたかったのかがよくわかりませんでした。

そもそも主張は特になく、純文学としての面白さを追求したということなのでしょうか?もし詳しい方がいらっしゃったら教えていただけると幸いです。

個人的には今まで読んだ芥川賞の中ではかなりオススメできる部類に入るのではないかと思います。ネタバレは最小限に留めたかったので、深く内容には触れていないかもしれませんが、興味を持った方はぜひ読んで見てはいかがでしょうか。

それではまた〜。

<記事で触れた書籍一覧>

『石の来歴』

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