こんにちはshun(@bookstyle_book)です!
今回はこちらの純文学作品を読了したので、紹介します。

『妊娠カレンダー』小川洋子 文春文庫
この『妊娠カレンダー』には、
・『妊娠カレンダー』
・『ドミトリイ』
・『夕暮れの給食室と雨のプール』
の3つの小説が収録されています。
今回は第104回芥川賞を受賞し、表題でもある『妊娠カレンダー』のあらすじや感想を紹介します。
それでは、小川洋子『妊娠カレンダー』のあらすじを紹介します。
『妊娠カレンダー』あらすじ/要約
小川洋子の『妊娠カレンダー』は、「妊娠している姉との生活を日記にした本」です。
『妊娠カレンダー』は主人公である「わたし」(妹)が、妊娠している姉と義兄との3人での同居生活を日記形式で記載したものです。
妊娠から出産までの過程の中で、姉のつわりや出産に対する心情などが吐露されています。
要約としてはこれぐらいでまとめるのではないかと思います。
基本的に、作品中に起こる出来事は平凡なもので、あらすじや要約として特に取り立てて記述する箇所はないかと思います。
むしろ、『妊娠カレンダー』で注目して欲しいのは、姉の妊娠への考え方ではないかと個人的には思います。
グレープフルーツジャム
レイチェル・カーソンの『沈黙の春』を最近読んだからなのかもしれませんが、グレープフルーツに関する描写が面白かったので、紹介したいと思います。
「わたし」は、姉のためにアメリカ産のグレープフルーツを使って、ジャムを作ることになります。
そして以前、とあるパンフレットに、アメリカ産のグレープフルーツに化学薬品が入っているという記述があったことを思い出します。
普通の人なら妊娠中の体に、そのような食品を入れることは避けるはずです。万が一、胎内にいる赤ちゃんに何かあったら済まないからです。
しかし、「わたし」はそのグレープフルーツがアメリカ産と知っていながら、わざとそれを姉に食べさせているのです。
そしてさらにグレープフルーツを買うときには、店員に「これはアメリカ産のグレープフルーツですか?」と買う前に尋ねています。
妊娠への不安
妊娠をしている当の本人である「わたし」の姉は、妊娠していることに対して、喜びよりも不安や怖さを感じています。
個人的に印象的だったのは次の姉のセリフです。
「そんなふうに単純にうるわしくはいかないのよ。わたしの中から出てきたら、それはもう否応無しにわたしのこどもになってしまうの。選ぶ自由なんてないのよ。顔半分が赤痣でも、指が全部くっついていても、脳味噌がなくても、シャム双生児でも・・・・・・」(p69)
子どもは親を選べないとよく言われるのを耳にしますが、親も同様に子どもを選ぶことはできません。
どんな状態の子どもが生まれてきても、親は親としての義務を果たさないといけません。
そのようなことを考えると妊娠したからといって単に喜んでいるだけではいられないない気持ちになります。
『妊娠カレンダー』感想/まとめ
ありふれた日常を描き出した作品は、個人的にあまり好きではありません。どうしても物足りなさを感じ、時間をかけて読む必要性を感じませんでした。
しかし、この『妊娠カレンダー』は少し違っていました。内容的には妊娠中のありふれた生活が描かれているはずです。
特別に何か重大な出来事が起こっているわけでもありません。それなのに、読んでいて充実感がありました。
『妊娠カレンダー』の魅力は、「妊娠」に対するネガティブな点が描かれている点にあるのではないでしょうか。
「妊娠」と聞くと、「おめでたい」というイメージを持つ人が多いと思います。しかし、主人公の姉は喜びよりも不安をずっと感じています。
自分の体内に1つの命がある漠然とした不安。
主人公の姉の妊娠に対する不安を描写している箇所は、男性では上手く表現することは難しいのではないでしょうか。
妊娠の負の側面を描き出した点。そこに本書『妊娠カレンダー』の魅力が詰まっているのではないかと思います。
・オススメ度★★★★☆
・読みやすさ★★★★☆
それではまた〜。
<記事で触れた書籍一覧>

『妊娠カレンダー』小川洋子 文春文庫

『沈黙の春』レイチェル・カーソン 新潮文庫
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