菊村到『硫黄島』を読んだ感想を紹介。戦争文学に触れてみる

『硫黄島』

こんにちはshunです。

今回は芥川賞シリーズの3記事目としてこちらの本を紹介したいと思います。

『硫黄島』

『硫黄島』

『硫黄島』菊村到  角川文庫

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この『硫黄島』は第37回(1957年)に芥川賞を受賞しており、その後映画化もされています。

『硫黄島』は、戦争文学です。本の内容などにも多少ですが、想像したく無いような描写などもあります。この先の本の内容紹介や私が考えたこともその点を理解した上で読み進めていただければと思います。

〜戦争文学に触れる〜

それではまず、『硫黄島』をまだ読んでいないという方のためにこの本のあらすじや魅力について紹介できればと思います。

『硫黄島』には全6編の短編小説を収録しています。収録している短編小説は以下の6編です。

・硫黄島

・しかばね衛兵

・奴隷たち

・きれいな手

・ある戦いの手記

・不法所持

ここでは、主に『硫黄島』についてのあらすじや感想などについて紹介していきます。感想部分では、他の短編小説も少し取り上げていきたいと思います。

『硫黄島』のあらすじは以下の通りです。

終戦から6年後、硫黄島での戦いから命からがら生き延びた片桐正俊は新聞社に勤めている私の元にやってきた。片桐は硫黄島に置いてきた日記を新聞の記事にしてほしいと私に相談する。しかし、片桐は硫黄島に渡り、そこで自殺してしまう。硫黄島で一体何が起きたのか。私は片桐が自殺をした原因をつけ止めようとするが、、

というようなあらすじになっています。

戦争文学では珍しく、終戦後の軍人の心理描写が描かれている作品です。戦争から6年経っても戦争の記憶をぬぐいきれず、折り合いをつけることができない片桐の苦しみが伝わってくるような1冊です。

〜硫黄島での戦闘について〜

まず、私自身、硫黄島での戦いに対してあまり知識を持っていなかったので、ここで読者の方々にも硫黄島での戦いについて整理していきたいと思います。

まず、硫黄島についてです。硫黄島は小笠原諸島の南端に位置する島で東京からおよそ1250kmほど離れた位置にあります。

次に、硫黄島での戦闘について紹介します。硫黄島での戦闘は1945年2月19日から1945年3月26日まで行われました。当時アメリカは敗戦色が濃厚になった日本に対して、台湾と硫黄島のどちらに進撃すべきか迷った上で、硫黄島への進撃を開始したそうです。

こちらのサイトによると、硫黄島での戦闘で、日本軍の20,129名が死亡し、アメリカ軍の6,821名が戦死したそうです。負傷者の数も合計すると、日本軍は21,149名が戦死もしくは負傷しており、アメリカ軍の28,686名が戦死もしくは死亡していることからも分かる通り、激しい戦闘が行われていたそうです。

日本軍守備隊の最高指揮官は栗林忠道という人物で、映画「硫黄島の手紙」では渡辺謙が栗林忠道を演じています。「予は常に諸氏の先頭にあり」という言葉通り、自ら先頭に立ち、軍隊を率いたそうです。

〜『硫黄島』から考える戦争の真の悲惨さとは〜

ここからは『硫黄島』をすでに読んでいる方向けに、この本を読んで自分自身が考えたことなどについて紹介していければと思います。

『硫黄島』を読んで一番に感じたことは、不謹慎なことは承知の上ですが、戦争は生き延びた人の方がかえって辛いのではないかということです。

戦争で幸運にも生き延びた人たちは、自分の仲間たちが倒れていく様子を真近で見てきたのでしょう。そんな中で、自分だけが助かったことに対して、生き残った喜びよりもむしろ、「なぜ自分は生き残ってしまったのか」という感情を抱き、自責の念に駆られてしまうこともあったのではないかと思います。

片桐もそのような思いを抱いていたのではないでしょうか。片桐は自分が2人の軍人を死に至らしめてしまったことに対して戦後も後悔をしていました。事情はなんであれ、自分が生き残るために人を殺してしまったという自責の念をずっと抱いていました。看護婦の森との結婚を見送ったのも、その自責の念があったからでしょう。

ラストにも記載されていますが、片桐は生きるために死ぬことを決意しました。それは矛盾しているように聞こえますが、ポジティブな響きをもたらしてくれます。

『硫黄島』の終盤で片桐が富田に言ったセリフが私にとって印象的だったので、ここで紹介していきたいと思います。

「それは、きみが戦争にいったことがないからだよ。人を殺した経験がないからだよ」片桐は苦しそうに言った。「ひとりを殺したのと百人を殺したのとどう違うか、そういうことをきみは考えたことがあるかね。それは数のうえの問題じゃないんだぜ。ひとりの人間を殺すというのは、そのひとりの人間のなかにこめられているすべての人間のねがいやよろこびやかなしみやのぞみを、同時に殺すことなんだ」(p50)

〜終わりに〜

戦争が終結してから既に70年以上の年月が経っています。私も含む今の若い人たちは戦争について触れる機会はほとんどないと思います。

そんな中で『硫黄島』は私たちに平和の尊さや戦争の理不尽さを教えてくれます。平和がいつ崩壊するかわからない現代にこそ、読むべき作品なのではないかと思いました。

それではこの辺で〜

<記事で触れた書籍一覧>

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