第34回芥川賞!庄野潤三『プールサイド小景・静物』感想/あらすじ

『プールサイド小景・静物』

こんにちはshunです!

今回はこちらの本を読了したので、紹介していきたいと思います。

『プールサイド小景・静物』

『プールサイド小景・静物』

「プールサイド小景・静物」 庄野潤三  新潮文庫

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『プールサイド小景・静物』に収録されている短編小説は以下の通りです。

・『舞踏』

・『プールサイド小景』

・『相客』

・『5人の男』

・『イタリア風』

・『蟹』

・『静物』

中でも、短編『プールサイド小景』は第32回芥川賞にも選出されました。全て読みましたが、今回は主に芥川賞を受賞した短編小説、『プールサイド小景』について紹介していきたいと思います。

『プールサイド小景・静物』の要約

この本を一言で表現すると、「一見すると幸せそうに見える家庭の脆さ」を描いた短編小説であると言えます。

主人公である織物会社の課長代理、青木弘男は小学生の2人の子供と妻との4人で家庭生活を営んでいます。夕方になると、青木は学校のプールで息子の練習に付き合い、夕食が近づくと妻が学校に来て、家族4人で家路に向かいます。

周囲の人たちからすると、彼らは理想的な家庭を育んでいるように見えます。

しかし、そんな周囲も羨む家庭を営む青木は実は18年間働いていた織物会社をクビになってしまっていました。その理由は会社の金を使い込んでしまったからです。しかもその金の使い道は仕事の苦痛を癒すために通っていたバーに当てられてしまっていたのです。

『プールサイド小景』ごく普通のサラリーマン家庭における脆さを描いた小説です。

会社勤めの辛さ

会社の金を使ってバーに通ってしまった主人公の青木。しかし、その原因を考えてみると、青木がそのような行為をしたことにもいくらか同情してしまいます。特に今サラリーマンで会社勤めで働いている方には痛いほどその気持ちがわかるのではないかと思います。

会社勤めについて青木は妻にこのように語っています。

会社に入って来る時の顔を見てごらん。晴れやかな、充足した顔をして入る人間は、それは幸福だ。その人間は祝福されていい。だが、大部分の者はそうではない。(p71)

青木にとって会社勤めは苦痛以外の何物でもなかったのでしょう。ただ毎日のように出勤し、自分のデスクに座る。もし、青木が独身だったら青木は会社を辞めて転職する可能性もあったかもしれません。

しかし、今は妻だけではなく、子供もいます。さらに18年間同じ会社に勤務して来ました。そんな状況下で会社勤めを自ら辞めるというには難しい選択肢だったのではないかと思います。

また、会社勤めで溜まったストレスを妻に吐くことは難しかったのでしょう。そしてそのストレスを解消するためにバーに通いつめてたのではないかと思います。

私はまだ学生で会社勤めのサラリーマンの気持ちになって考えることはできませんが、その気持ちは少しは理解することができます。

妻の夫への愛

『プールサイド小景』で最も印象深かったのが、妻の夫への愛情です。

通常、もし自分の夫が会社の金を使い果たし、そしてその金を女目当てで通っていたバーにつぎ込んでいたら、ほとんどの妻は夫のことを見限ったり、激怒したりするのではないでしょうか。

しかし、青木の妻は不快感を滲ませながらも、夫のことを見限ったり、激怒したりすることはありませんでした。

夫のことばかりを責めるのではなく、夫から会社勤めの辛さを聞いた後には「自分は家庭で夫の心を慰めることができていなかったのではないか」と家庭での癒しを作ることができなかった自分自身にも非があったのではないかと考えています。

普通なら感情的になって夫ばかりを責めるはずですが、そうするのではなく、自分にも落ち度があり、責任があるのではないかと考えている点に妻の夫への愛が伺えると感じました。

終わりに

『プールサイド小景』は平凡な家庭の幸せの脆さを描いた短編小説です。しかし一瞬でその幸せが瓦解したのではなく、小さいヒビが徐々に大きくなるようにして幸せな家庭が崩壊することを『プールサイド小景・静物』は実感させてくれます。

青木と同じように会社勤めをしていて、会社に対してあまりポジティブなイメージを持っていないサラリーマンの方などには主人公の青木の心情がよく理解できると思いますので、読んで見てもいいかもしれません。

ごく普通の家庭を題材にしているので、読みやすのでおすすめです。

それではまた〜

<記事で触れた書籍一覧>

『プールサイド小景・静物』

『プールサイド小景・静物』

「プールサイド小景・静物」 庄野潤三  新潮文庫

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