複雑な人間関係を読み解く!芥川受賞小説/中上健次『岬』

『岬』

こんにちはshunです!

今回はこちらの本を読んだので紹介していきたいと思います。

『岬』

『岬』

『岬』 中上健次 文春文庫

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『岬』の概要

種違いの兄弟たちと暮らしている主人公秋幸。秋幸の父親は数々の女性と性行為に及ぶ男で、昭幸が生まれた頃には刑務所にいました。

そんな父親の「血」が半分でも自分の体内に流れてしまっていることに対して、強い嫌悪感を抱き、苦しむ秋幸。紀州を舞台とし、昭幸とともに暮らしている複雑な家庭に様々な人間関係のトラブルが続出します。

「血」に悩まされ、苦しみ続ける秋幸。それでも必死に生きようとする秋幸の力強さ、人間臭さを描いた一冊になっています。

複雑な人間関係

まず、登場人物が非常に多いのがこの本の特徴です。短編小説ですが、メモしておかないと忘れてしまうのではないか?と思ってしまうくらい人物が登場します。

また、さらにそれを複雑にしているのが家系です。途中で誰と誰の子供が秋幸の姉だっけ?となることもあるかと思います。

自分は読んでいる際にメモを取っていないので、途中で人物関係がよくわからなくなってしまって挫折しかけてしまいました(笑)。

本のどこかに家系図とか書いておいてくれたら読みやすかったのではないかと思います。ネットで一応軽く探してみましたが家系図を探すことはできず、読むのにかなり苦労しました。

そんな人間関係とは対照的に、秋幸の仕事は土方で、秋幸自身も土木の単純作業について自身で性に合うと述べています。複雑極まりない家系の中での生活の中で単純な労働が気に入っているのでしょう。

父への憎悪

秋幸が子供のことを一切考慮せずに自身の快楽のため様々な女性と肉体関係を持つ自分の父親に対して、強い憎しみを持っていました。

そいつが、自分の父さんか、と思った。虫酸が走る。反吐が出る。彼は思った。実際、草の葉を擦り潰すように、きれいさっぱりもともとなかったこととして、消してしまいたい。(p222)

自分の父親に対して「虫酸が走る」「反吐が出る」といった言葉を使うあたりに、強い憎悪の念を感じます。

秋幸は自分の生まれについて苦しみ続けます。『岬』の中でも「血」や「家系」といった制度に対しての怒りの描写がいくつかあります。

秋幸が自らの「血」の不幸で苦しみ、もがきながらも自殺という選択を取らず、父親に反抗する姿勢をとったところに面白さを感じました。

最後に腹違いの妹を肉体関係に及んだということは近親相姦に当たります。近親相姦といういわばタブーを秋幸があえて行ったのは、「血」や「家系」といった制度に対しての復讐と考えることができます。

『岬』まとめ

『岬』を読んだ感想として一番にあるのは、やはり「非常に読みにくい」が1番です。私以外の方の中にも『岬』を読んで挫折しかけた、もしくは読むのをやめてしまった人はいるのではないかと思います。なので、読むときは家系図などを自分で作りながら読んでいく必要があるのではないかと思いました。

また、この『岬』では、不明点が多いです。

例えば姉が精神崩壊をしかけている場面。あれは本当に精神が崩壊しかけているが故に退行のような行動をしているのか、それともわざと何らかの意図を持って行なっているのかは最後まで読んでもよくわかりません。

この辺を自分で考えていくのが小説の楽しみなのかもしれませんが、、あまり謎を残して読み終えるのがあまり好きではないので、何となく読了感がありませんでした。

姉の精神崩壊についてこういう解釈あるよって方いましたら教えていただければと思います。

それではまた〜!

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『岬』 中上健次 文春文庫

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