安部公房『壁~S・カルマ氏の犯罪』(新潮文庫)の感想とあらすじ

『壁』

こんにちはshunです!

今回はこちらの本を紹介していきます。

『壁』

『壁』安部公房 新潮文庫

⇒Amazonで見る

安部公房の著書『壁』は6つの短編小説を収録しています。

・『S・カルマ氏の犯罪』

・『赤い繭』

・『洪水』

・『魔法のチョーク』

・『事業』

・『バベルの塔の狸』

その中でも、『壁~S・カルマ氏の犯罪』は第25回芥川賞を受賞しています。

今回は『壁~S・カルマ氏の犯罪』を中心にあらすじや感想を紹介していきたいと思います。

『壁』の要約/あらすじ

私たちは紛れもなく人間として日常生活を送っています。

しかし、果たして何を持って人間と定義するのでしょうか?そんなことを考えさせてくれるのが本書『壁~S・カルマ氏の犯罪』です。

主人公の「ぼく」はある朝、自分の名前がわからないことに気付きます。「ぼく」の名前は本来「S・カルマ」という名前であったらしいということしか分かりません。

会社に行くと、なんと自分の名刺が自分の席に座っていました。

『壁~S・カルマ氏の犯罪』では、名刺だけでなく、眼鏡やズボンなどもまるで意思があるかのように動きます。トイストーリーのおもちゃのようなイメージです。

「ぼく」からは、その名刺は半分は名刺に見え、もう半分は本物の「ぼく」に見えるというなんとも奇妙な姿をしていました。

「ぼく」は見ているものを胸の中に吸い取ってしまう能力が身についてしまっており、そのせいで裁判所などに連行されるといった事態も起きます。

その後も「ぼく」は様々な不可思議な現象に引き込まれていくといったあらすじになっています。

本書『壁~S・カルマ氏の犯罪』は「壁」というキーワードを中心として、現実世界では起こりえないであろう様々な出来事を描いた小説です。

無機物が動きだす不条理な世界

「シュールレアリスム」という言葉はまさにこの本のためにあるのではないかと思えてしまいます。

シュールレアリスムは超現実主義とも呼ばれます。現実には起こりえない幻想的な出来事を表現する技法のことです。

『壁~S・カルマ氏の犯罪』で起こることはまさにシュールレアリスム。

自分の名刺が他の人間と会話をしているだけでも不可解なのに、その人間も実はマネキン人形であったりと、不可解の連続です。

また、『壁~S・カルマ氏の犯罪』の世界では無機物がまるで意思を持っているかのように行動しています。

「ぼく」を部屋から外に出さないために、ネクタイや眼鏡などが自分の意思で行動しているような描写もあります。

無機物たちは、人間に酷使されていたことについて不満を持っており、人間たちに対して革命を起こそうとしています。

「壁」についての記述

また、本書のタイトルにもなっている「壁」についてもかなり面白い記述があります。「こんな風に壁を捉える人がいるのか」と考えさせるような内容が多いです。

例えば、序の冒頭では、壁についてこのように記載されています。

何のために、壁はあるのか。すくなくとも、空間を仕切るためのものであるわけがない。この狭い地上を、なにゆえにまた細かく仕切って、光の通路をふさぐ必要があるのですか(序より)

また、『壁~バベルの塔の狸』では、こんな記述もあります。

ぼくは、歴史が物語っている数々の、詩人や予言者に対する迫害を想出していました。真理に対しては、大衆はいつもかたくなな壁です。(p200)

『壁』終わりに/感想

内容的には難解というわけではなかったですが、抽象的な話題についていけない時がありました。

シュールレアリスムですが、そこにはユーモアも同居していて、あまり非現実的なことによる怖さをあまり感じずに読んでいくことができます。

安部公房はカフカやルイス・キャロルの影響を強く受けたそうです。

しかし私はまだ彼らの本を読んだことがないので、彼らのどのような箇所が安部氏に影響を与えたのかはよくわかりません。

時間ができたら、カフカとルイス・キャロルの本も読んでみたいと思いました。

また、今回の記事ではほとんど触れることができませんでしたが、『壁~バベルの塔の狸』も気に入りました。

こちらはある人間がある日、影を奪われてしまうといった内容になっています。こちらも面白いので、ぜひ手にとって読んでみてはいかがでしょうか。

それではまた〜。

<記事で触れた書籍一覧>

『壁』

『壁』安部公房 新潮文庫

⇒Amazonで見る

<関連記事>

「第34回芥川賞!庄野潤三『プールサイド小景・静物』感想/あらすじ」

「第114回芥川賞受賞!又吉栄喜『豚の報い』の感想/あらすじ」

「複雑な人間関係を読み解く!芥川受賞小説/中上健次『岬』」

「第136回芥川賞『ひとり日和』/青山七恵|あらすじと感想を紹介」


コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です