こんにちはshunです!
今回はこちらのロシア文学を読了したので、紹介していきます。

『賭博者』ドストエフスキー 新潮文庫
『賭博者』の著者であるドストエフスキーは賭博好きとしても有名です。
ドストエフスキーは本書『賭博者』の中で、「ロシア人に特有な病的な気質を描き出すこと」に力を入れたそうです。
それでは早速、ドストエフスキー『賭博者』のあらすじや感想を紹介していきます。
『賭博者』あらすじ/要約
主人公のアレクセイは、ドイツで将軍家の家庭教師として働いています。
家庭教師として働いている将軍家は、財政難に陥っていて、頼りになるのは「おばあさま」だけでした。
通称「おばあさま」のアントニーダには死が近いとの噂が立っていました。
アントニーダが死ぬと、将軍にその資産が流れ込むことになっていたため、その資金を将軍家は頼りにしていたのです。
しかし、死が近いと噂されていたアントニーダが、比較的元気な状態で現れます。
アントニーダはルーレットで自分の資産を使い果たしてしまいます。
さらに、アレクセイが心を寄せていた将軍の娘ポリーナも、謎のフランス女性、ブランシュに借りを作ってしまいます。
アレクセイは思いを寄せているポリーナの借金を返済するために、ルーレット場へと足を運ぶのでした。
負の連鎖
自分自身がギャンブル依存症であり、巨額の借金を背負っていた過去があるドストエフスキーが書き上げた本書『賭博者』。
『賭博者』はギャンブルにのめり込んでしまう人の精神状態を見事に描き出しています。
ギャンブルの難しさは、引き際を見極めることが非常に難しい点にあります。
多くの人が無理をしてまでギャンブルにのめり込んでしまい、破滅の道を歩むことになってしまうのです。
しかも、その引き際は勝っている際でも難しいところにギャンブルの持つ恐ろしさがあります。
通常、ギャンブルで負けている人は「次こそはさっきの負けを取り返す」と考えてしまいます。
しかしギャンブルというものは勝つことよりも負けることの方が多いため、結果的にジリ貧になってしまうのです。次に絶対勝てるという保証も全くありません。
一方で、一回大勝ちした人であっても、引き際を見誤り、結果的に大損をしてしまうという場合もあります。
その場合には「もっと儲けを増やしたい」という感情が芽生えています。
「今日は自分は運が良い」
そして総合的には大損をしてしまうのです。
『賭博者』感想/まとめ
「金」と「女性」によって破滅していく人間の心理分析が非常に生々しいです。この辺りは流石ドストエフスキーと言ったところでしょうか。
本書『賭博者』を通して、人間には「破滅することへの欲望」があるのではないかと思いました。
私たちには「大儲けしたい」と考えている一方で、頭の片隅では「破滅したい」という欲望がわずかながら存在しているのではないのでしょうか。
ギャンブルで勝ったにもかかわらず、そこで辞めずに続けてしまうことも、破滅したい欲望が絡んでいるような気がします。
本来、人間は自ら破滅することを望んでいる生き物であり、そんな欲望を簡単に満たしてくれるものが「賭博」なのかもしれません。
そしてその欲望が普遍的だからこそ、世間に良いイメージが少ないギャンブルが、未だに存在し続けているのかもしれません。
本書『賭博者』を読んで、そのようなことを感じました。
ドストエフスキーの実体験を元にした小説であるために心理分析は鋭いですが、個人的には『罪と罰』の方が心理分析は鋭いような印象を受けました。
気になった方はぜひ読んでみてはいかがでしょうか。
それではまた〜。
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『賭博者』ドストエフスキー 新潮文庫
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